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志賀直哉 「網走まで」「正義派」 [ほん]

引き続き志賀直哉の短編集を読んでいる。なんというのだろうか。非常に写実的に書かれている。淡々と書くのだが、控えめにリアリズムを感じる。僕は海外暮らしというのもあってか、永らくこういう情景から離れていた。そして、現代の文学というものの中には、起承転結やドラマチックさというのはよくあるが、あまりこういう風景が出てこないような気がする。とはいっても、今の文学作品がどうなっているかについて、僕が正当に論じられる状況にはまったくないわけだが。

「正義派」で扱われている内容は、昔読んだ芥川竜之介の短編などにも見られる気がする。この話では都電の線路工夫だが、芥川のトロッコなどもこの手の労働者が出てくる話しだ。プロレタリア文学でなくても、こういう話がよく出ていくるのは、明治・大正・昭和と日本が発展していく過程、そういう時代的なものなのだろうか。

「網走まで」は汽車物である。子供と嬰児を抱えた女性と上野発の汽車に乗り合わせる話だ。びっくりしたのは、この話し、いきなり終わってしまう。なんということだろうか。小さな情報が多くちりばめられたところで、あまりに唐突に終わってしまうので、いろいろ想像せざるを得ないのだ。

汽車というのはおおむね、おもむきのある乗り物体験だ。戦後金の卵を満載してやってきた東北からの列車。石川啄木の停車場。そういう体験には独特の匂いがある。匂いといえば、芥川の「蜜柑」を思いだした。


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